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上下関係ではない、共創相手としてのフラットな関係性。『未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ』

上下関係ではない、共創相手としてのフラットな関係性。『未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ』

2023年5月21日にテレビ東京で放送された『未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ』。昨年10月に続き第二弾の放送となる今回はライブコミュニケーションアプリの「Pococha」と、ミツカンの事例を取り上げています。MCを務めるのは前回同様に別所哲也氏。コメンテーターにはMEGUMI氏、モデル・タレント「よしミチ」姉弟のよしあき氏とミチ氏。本田哲也がナラティブの最前線を分析します。

子育てに悩むシングルマザーが、配信を通じて生き方に自信を取り戻すまで

2017年にDeNAがリリースしたPocochaの累計ダウンロード数は486万以上(23年3月末時点)。他の配信アプリとPocochaが大きく異なるのは、配信者であるライバーとリスナーの関係性にあります。

番組で密着したのはライバーのサンディさん。個人でエステサロンを経営するかたわら、仕事の合間を縫って1日3回の配信を行っています。朝8時30分からは「サンディ・モーニング」と題した2時間の配信で、リスナーは100人ほど。その後、食事やエステの仕事を挟み、12時30分には2回目の配信。雑談に加え、歌やダンスでリスナーを楽しませます。

Pocochaでの配信を始めて2年。「一番変わったのは自分に自信が持てたこと。人生が変わりました。」とサンディさんは語ります。これまでは人に嫌われることを恐れてきた彼女でしたが、Pocochaで思い切って素の自分を出したら好きになってくれる人が多くいて、自分も誰かにとっての特別な存在になれることに気がついたそうです。

サンディさんの配信初期からのリスナーであるギドらんどさんはこう語ります。「配信の中では上下がありません。『共感』と『共有』というワードがあって、とにかく楽しいことに共感して笑顔を共有しようというのがサンディさんです」。サンディさんのモットーは「明るく楽しく前向きに」。配信中はリスナー同士の交流も頻繁に行われていて、そこに連帯感・一体感が生まれています。

20時30分からは3回目の配信。この日は尻尾と耳付きでキツネダンスを踊り、リスナーを楽しませました。シングルマザーのサンディさんは子育てに悩んだ時期もありましたが、Pocochaの配信を通じて自分の生き方に自信が持てるようになったといいます。
「子どもに迷惑がかからない範囲で自分がしたいことをすれば、幸せな親の姿を見て子どもも幸せになることに気づきました。今は親子ともども幸せだと思います。」

インフルエンサーとは違う、小さなコミュニティのライバーが世界を変える

さらに番組ではPocochaでの配信を仕事にしている、お笑い芸人のしの丸さんにも密着。コロナ禍で仕事が激減したものの、1日3回の配信を2年間続けることで、今では配信がそのまま芸人の仕事になっています。「YouTuberが職業になったように、今はライブ配信が仕事になる時代です」としの丸さんは語ります。

Pocochaは従来のインターネットサービスと違い、小さなコミュニティを大事にしています。番組内で紹介された2名のライバーも、一般的なインフルエンサーと比較すると情報を届けることができる人の数は少ないかもしれません。しかしその分、発信者と受信者間での、より深いコミュニケーションを可能にし、また、より多くの人がそのパワーを手にすることができます。それがより良い社会の形成につながると、Pocochaを立ち上げたプロデューサーの水田大輔氏は説明しています。

前述のサンディさんはリスナーの後押しを受けて、バンド仲間とともにライブの開催を目指しています。Pocochaならではのフラットなライバーとリスナーの関係による、新しいナラティブが生まれています。

「僕もサンディさんと同様に、自信がない学生時代を過ごしてきていじめられたりもしたけれど、中三からSNS始めてファンの方に応援されるようになって自信が持てるようになりました」(よしあき氏)

「ライバーとリスナーが共鳴、共感しあって自信につながる。ナラティブの究極ですね」(別所哲也氏)

「私はこれまで配信に抵抗があり、私生活を見せないほうがいいと思っていたけれど、思いきってインスタライブを始めるとファンとの距離感が縮まっていく。コミュニティができあがっていく実感があります」(MEGUMI氏)

「Pocochaの事例は、ナラティブそのものですよね。人の数だけナラティブがある。上下関係がなく、フラットな中でみんながイキイキしていることは素晴らしいと思います。企業側も『完璧にしなければいけない』と考えすぎず、余白があるコミュニケーションも取り入れていくべきだと思います」(本田哲也)

220年の歴史に満足せず、子どもたちとの共創で新商品を生み出すミツカン

「味ぽん」で知られるミツカンはキッザニア東京にブースを構えています。ここで子どもたちは発酵食品である酢の基礎知識を学び、味ぽんの製造過程を体験できます。同社の220年の歴史で、メインターゲットではない子どもにアプローチをかけるのは初の試み。

2015年には酢づくりの歴史や食文化の魅力を次世代に伝えるため、愛知県半田市にミツカンミュージアムを設立し、22年には若者に鍋料理を無料で提供する「凹メシ(へこめし)食堂」を表参道にオープンさせるなど、食を通じて社会全体の健康に貢献する取り組みを続けています。

現在、ミツカンのオフィスでは親子を招待し、子どもたちの意見を積極的に新製品に取り入れています。ミツカンのWebサイトでは1000以上のレシピが公開されていますが、これまで子どもの意見を取り入れたレシピはありませんでした。そこで子ども向けのメニューを開発するため、ポン酢の酸味を子どもたちが美味しいと感じるのかを調査しているのです。

味ぽんと9種類の調味料を混ぜてオリジナルの餃子のタレをつくる実験では、自由な発想でマヨネーズやハチミツと味ぽんをミックスします。大人と違い率直な意見を返してくれる子どもの声は貴重な情報源です。

こういった取り組みの根底にあるのは、食への関心を高めて欲しいという企業の想いです。今後、子ども向けの甘い味ぽんが開発される日が来るのかもしれません。

「200年以上の歴史に満足するのではなく、子どもとともに新しい風を吹かせるという姿勢が素晴らしいですね。まさに文化活動です」(MEGUMI氏)

「今までの顧客という概念に囚われず、その先に進んでいますね」(別所哲也氏)

「商品が美味しい、機能が優れていることも大事だけれど、企業が社会でなにをやろうとしているのかが重視される時代です。その企業がどんな未来を目指しているのか。そこが求められています」(本田哲也)

IT企業のDeNAと220年以上の歴史を持つミツカン。正反対に見える企業がともに大事にしているのは、ユーザー・顧客とのナラティブな関係です。企業と消費者の関係は変化しつつあり、並列で共創する時代が訪れているといえるでしょう。
▼2022年10月16日放送『未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ』についてはこちらから

「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」

企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。

「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。

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