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老舗企業が取り組む、それぞれのナラティブに学ぶ。『未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ』

老舗企業が取り組む、それぞれのナラティブに学ぶ。『未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ』

2025年5月11日にテレビ東京で放送された『未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ』。第4弾となる今回は、キリンホールディングス・森永乳業・ヤマハ発動機の3社の老舗企業に密着。それぞれの企業が描くナラティブを通じて、社会課題への向き合い方と企業の進化の姿に迫ります。MCを務めるのは前回同様に別所哲也氏。コメンテーターに安めぐみ氏、優木まおみ氏、森島みなみ(KOBerrieS♪)氏を迎え、本田哲也がナラティブの最前線を分析します。

「ビールと飲料の会社」から、「人々の健康に貢献する会社」へ進化するキリン

100年以上の歴史を持つ老舗飲料メーカーであるキリンは、オリジナルの紙芝居を作って幼稚園での読み聞かせを行っています。
「幼稚園に通う女の子が大切な日を元気に迎えるための物語です。早寝早起きができなかったり、食べ物の好き嫌いがあったり、それらの裏側にいる悪者をやっつけるストーリーで、この物語を通して、小さい子が自主的に早寝早起きをして、好き嫌いをなくせるようにしたい。そういった趣旨で物語の読み聞かせを行なっています」(マーケティング戦略部 岸川真氏)

このオリジナル紙芝居について、都内の幼稚園の園長は以下のように語ります。
「昔に比べて今は、それぞれの家庭が独自に子育てをする意識が強くなっています。幼稚園と家庭とキリンのような企業、それぞれが力を尽くして一人の子どもも取り残さない。そういう活動ができればいいと思います」(貞静幼稚園 園長 冨田敦氏)

このプログラムを担当するキリンビバレッジの社員、相馬杏美氏と島田亜季氏はともに三児の母親。昨年に免疫ケアアドバイザーの社内資格を取得して、各地の小学校を巡回して特別授業を行っています。「免疫の大切さについて先生から子どもたちに伝えることも大切だけど、先生以外の大人からも伝えることで子どもたちの興味や理解が進みます」と相馬氏は語ります。

授業では「ウイルスや細菌から人間の身体を守るシステムである免疫は、簡単に低下してしまう」という特性をイラストとともに分かりやすく説明します。キリンビバレッジの社員が先生として行う授業は子どもたちにも好評で、「キリン=ビールの会社というイメージがあったけど、免疫ケアのことまで考えていて、すごくかっこいい仕事だなと思いました」といった感想が聞かれました。

岸川氏はこれらの活動をさらに広げるため、道内514の私立幼稚園が所属する北海道私立幼稚園協会に対し、活動内容のプレゼンを実施することに。結果は見事に理事全員の賛同を得られて可決。先方からは「社会課題の解決や新たな価値の創造に向けてともに活動するという、一つの好事例になればいいと思っています」という好反応をいただきました。

飲料メーカーから進化するキリン。その未来像はどのようなものなのでしょうか?
「ビールと飲料だけの会社ではなく、人々の健康に貢献する会社に発展させたい。国内のみならず世界に対しても、そのようになっていきたいと考えています」(マーケティング戦略部 岸川真氏)

「地域と密着しながら健康の大切さを伝える、地道な活動をされているんですね」(優木まおみ氏)

「子どもたちがいる場所に行って啓発活動。すごく素敵なことですよね」(安めぐみ氏)

「製品を売るだけのマーケティングではなくて、健康を大切にする企業だということを伝えていますね」(別所哲也氏)

「ただ商品を宣伝するというよりは、大きな物語の中に商品もあるということですね。時代はそのようになっていくと思います」(本田哲也氏)

「北海道牛乳」で日本の魅力をインバウンドに発信。森永乳業の挑戦

日本を楽しみにやって来るインバウンド(訪日外国人旅行)客のために何ができるのか。森永乳業は今年の3月10日〜14日の5日間にわたって、浅草でインバウンド客をもてなすイベントを実施。同社の強みである北海道牛乳と、牛乳を原料にしたメイドインジャパンの商品を多くの参加者にふるまいました。入り口そばには疑似搾乳のできる通称「模擬牛」が設置され、乳しぼりの感覚を体験できます。

インバウンドに向けた初の施策で何を目指しているのか。マーケティング本部の林正義氏は「口コミで『日本に行ってすごく楽しかった』という空気感をまずは作りたい。せっかく来ていただいているので、楽しんで帰っていただきたいですね」と語ります。

イベントにはどこの国から、どのような嗜好の人々が来場しているのか。森永乳業の社員が、今後の参考に好きなアイスのフレーバーやコーヒーの飲み方についてリサーチを行います。なかでも苦労したのが、アイスの食感や味を表す表現について。アメリカ人は「リッチでクリーミーな食感で、豊かな風味」、フィリピン人は「毎日食べられて、甘すぎない」、ドイツ人は「バニラが際立っている」と表現。なかには企業側では思いも寄らない「マシュマロみたい」という感想もあり、新しい発見も得られました。

このイベントをきっかけにして未来へつないでいく、訪日外国人とのナラティブ。インバウンド客からのさまざまな声を、これからの施策に活かしていきます。

「国によって嗜好や求めているものは違います。国ごとに違う訴求をすることで、より刺さるコンテンツ・商品が提供できるようになると考えています」(マーケティング本部 林正義氏)

日本と外国をつなぐナラティブの一つに、日本が誇るプロダクトもあるのです。

「体験型のイベントで自分たちのプロダクトの良さを伝え、海外のマーケティングリサーチもしてしまうわけですね」(別所哲也氏)

「国によって捉え方や感じ方が違うのが驚きだし、新たな視点がたくさん得られますね」(安めぐみ氏)

「アイスの食感についても、昔は企業が決めていましたが、今はお客さまに『どう思いますか?』と直接聞きます。お客さまの中に答えがあるかもしれないと考える、新しいアプローチに変わってきています」(本田哲也)

横浜の新拠点から生まれる「共創」。ヤマハ発動機が見据える未来

2025年に創立70年を迎えたヤマハ発動機が去年、横浜みなとみらいに新オフィスと体験型ショールームをかまえました。本社は静岡県磐田市にあり、売上の9割以上が海外という老舗企業がなぜ横浜に新たな拠点を設けたのでしょうか。

「今の時代は市場がキャップ(蓋)されていて、その中で自分たちの未来を作っていかなければいけません。モノを作って提案するだけでは、これからきっと苦しくなる。横浜では中途採用を行い、他の会社との共創も進めます。それがコンセプトです」(執行役員 経営戦略本部長 青田元氏)

この新拠点は新規事業のチームが集まるイノベーションセンターとしての機能も持っています。「共創・新ビジネス開発部」では、既存のゴルフカートを活用した新サービスを提供しています。乗り降りがしやすく、乗客の距離が近く会話が生まれやすいというゴルフカートの特性に注目して、単なる乗り物ではないコミュニケーションツールとして活用する試みです。

多岐にわたる事業をテクノロジーで支える「デジタル戦略部」が注力しているのが、生成AIのグローバル展開。
「人が単純作業に従事するくらいなら、機械に変えていく。自由になった人は想像力を駆使して、新しいことができれば良いと考えています」(執行役員 経営戦略本部長 青田元氏)

その想像力を発揮してオリジナルのゲームを開発したメンバーもいます。コントローラ代わりに使用しているのは、ヤマハ発動機が開発したボートの操縦桿。ここはイノベーションセンターということで、社内外の人間同士のコミュニケーションが取りやすく、新しい共創が生まれる土壌があります。

その他、アフリカやインドなどで輸送事業や貸出事業を展開する「MBS(モビリティサービスビジネス)部」や、船のサブスクリプションサービスを提供する「マリン事業部」など、さまざまな事業部がイノベーションセンターには集結しています。

創業時から変わらないヤマハ発動機の原動力は、やりたいことを突き詰める職人魂です。その魂とともにヤマハ発動機はどこに向かうのか。
「世の中がどんどん変わる中でいろいろなことを試して、お客さまが何を考えているのか、僕らが何をしなければいけないのか見つけていきたい。それが将来、ヤマハ発動機の経営につながればいいと考えています。何十年後かに振り返って、『あのときやっておいて良かった』となれば」(執行役員 経営戦略本部長 青田元氏)

「皆さんは仕事のやりがい、情熱をどこに感じていらっしゃいますか?」(別所哲也氏)

「仕事が終わったあとに『優木さんに頼んで本当によかった』と言われることに、必要とされる喜びにやりがいを感じます」(優木まおみ氏)

「見た人に『めぐみちゃんを見てハッピーな朝になったよ』などと言われるなど、誰かによい影響を与えられているんだなと感じる時にやりがいを感じます」(安めぐみ氏)

「自分が発信して『やり切った!』という一方通行の爽快感ではなく、相手があって相手からのリアクションがある。インターラクティブが基本中の基本ですが、なかなか企業の発信やプロダクトメイキングで忘れがちですよね。」(別所哲也氏)

「ナラティブというのは、最初にあるのは情熱や想いです。そこから物語がはじまっているので、一生懸命仕事をしていて周りのことも考えている方は、基本ナラティブな考え方をお持ちだと感じます。さらに今日大切だと思ったのは妄想する力です。『できないかもしれないけれど、やってみたい』という妄想する力がないと、物語も始まらないし新しい未来にも進めない。これは企業も個人も一緒です」(本田哲也)

「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」

企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。

「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。

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