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地域に貢献し、子どもたちの健康を守るナラティブマーケティング 「未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ」<後編>

地域に貢献し、子どもたちの健康を守るナラティブマーケティング 「未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ」<後編>

ナラティブをテーマにした経済番組「未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ」が、2022年10月16日にテレビ東京で放映されました。番組では世界最先端企業である、アマゾン、ネットフリックス、パタゴニアのほか、コクヨ、KDDI、ロッテなどの日本企業がこぞって取り入れるナラティブな活動の潮流を捉え、企業活動成功の秘密に迫っています。MCには別所哲也氏、コメンテーターには潮田玲子氏、IMALU氏、小浜桃奈氏とともに、本田哲也も登場しました。放送で語られたトークを引用し、取り上げられた内容をお伝えします。
https://narrativegenes.com/articles/5xImw

地域住民の憩いの場としても機能する、コクヨの開かれたオフィス

品川にあるコクヨのオフィスには、一般人も来訪できる緑豊かな広場とショップが併設されています。この広場は普段からランチタイムの食卓としても利用されています。同社が築40年の自社ビルをリノベーションしたのは2021年のこと。ショップは顧客の意見をダイレクトに聞ける場所ということで、ときには社長も顔を出します。

「すごく貴重な機会ですよね。自信にもつながるし、気づきもありますし。僕自身も嬉しくなって、頑張ろうかなと思いますよね」(コクヨ株式会社 代表取締役社長 黒田英邦氏)

2021年の大規模なリノベーションを任されたのは、入社3年目だった若手社員です。コロナ禍において考えたのは、人が集まる意味と意義でした。

「街の人に親しまれるということが重要なポイントだったので、地域の人や他の企業を巻き込みながら実現していきたいという思いがありました」(コクヨ株式会社 設計・デザイン担当 高橋絵里氏)

「家でも働ける中で、オフィスでしかできないことを皆で考え洗い出して、計画にしていきました」(コクヨ株式会社 設計・デザイン担当 金子眞央氏)

ワークスペースはそれぞれに「整う」「捗る」「育む」といったコンセプトが設けられ、内装も統一されています。例えば「整う」のフロアはアウトドアテイストに統一され、テントを思わせる一角は集中して会議やアイデア出しができる空間となっています。「育む」のフロアには、先輩と後輩がざっくばらんに語り合える専用のテーブルが用意されています。その日の気分や作業に合わせて場所を選べるので、社員からの評判も上々。

リノベーション以降、広場の利用者や見学者は1年で7万人近くに上り、 社内でも新たなプロジェクトが続々生まれていて、リノベーションからさまざまな波及効果が生まれています。

「ちょっと10分くらい休憩したときに、いいアイデアが生まれることもあると思うんですよね。遊び心があるオフィスはいいですよね」(IMALU氏)

「企業側は消費者の声を聞いて初めて知ることがあります。新たな気付きを得るために、どんどん消費者の声を取り入れる。そのために多くの企業がSNSを活用しているんだと思います」(小浜桃奈氏)

「余白がありますよね。 街の人も自由に出入りができてガチっとしていない。所々にいい余白をつくりながら進めている点が成功の秘訣でしょう」(本田哲也)

地元民の視点で知られざる穴場スポットを発信。御殿場におけるKDDIの取り組み

2021年に創立120年を迎えた静岡県の御殿場高等学校は、御殿場市、KDDIとともに、地域の魅力を発信するアプリを開発しています。生徒たちが主役となり、地元民ならではの御殿場情報を発信していきます。かねてより御殿場市は、観光客の市内滞在時間が短いという観光課題を抱えていました。その課題を解消すべく、隠れた魅力のあるスポットを発信していくことがこのアプリの目的です。

プロジェクトがスタートしたのは今年2022年の5月。まだ開始から半年足らずですが、生徒からは地元の温泉施設や銭湯、神社など多数のスポットがピックアップされ、順調な滑り出しを見せています。

「いろいろな広がりが出てきていると感じます。このつながりが魅力的ですし、今後も続けていくことでさらなる広がりを期待しています」(KDDI株式会社 西田徹氏)

スポットの中には生徒が部活帰りに偶然見つけた、市内で一軒しかないという銭湯もあります。地元ならではの情報が詰まったアプリは、御殿場を訪れる旅行者に数々の新しい体験を届けてくれるでしょう。

「大人からしても、高校生目線でのお勧めスポットは見たいですよね。大人だったら気づかない場所、それこそ“部活帰りに見つけた、市内唯一の銭湯”という物語もいいですよね」(IMALU氏)

「共創ですよね。通信会社、生徒、先生、市の観光課、地元の人々、みんなで紡ぐ物語をつくることは、すごくナラティブなアプローチですね」(本田哲也)

子どものうちから虫歯予防を習慣化させる。ロッテのキシリトール戦略

ロッテは北欧の生活習慣にヒントを得て、25年前からキシリトール 製品を販売しています。2020年からは歯科医師や自治会と協力して、幼稚園や小学校などに商品を提供しています。給食後に3粒、おやつ後に3粒を口に含み、噛まずに口の中でコロコロと転がします。子どもたちがすぐに噛んでしまわないよう、先生は紙芝居やクイズで時間を稼ぎます。

「小さい頃からのキシトール習慣が大事だと思っています。そのために、幼稚園や保育園のうちから食後にキリトールを摂種する習慣を、 虫歯予防先進国のフィンランドに倣って2020年からスタートさせました。幼稚園や保育園で食べ物を配るという難しさもあるので、一歩一歩地道に続けています」(株式会社ロッテ キシリトールブランド課 課長 山本賢一氏)

今、同社が取り組むミッションの一つがベトナムにおけるキシリトールの普及です。東南アジアではオーラルケアの認識も日本と比べて低い状態です。キシリトールの商品は流通していますが、暮らしに根づくまでには至っていません。そこで、日本と同じように現地の歯科医師たちと協力し、幼稚園への商品提供を始めています。

この取り組みは現地でも受け入れられ、幼稚園関係者は「何年もこの活動が続いてほしい。キシリトールを食べて体感できるプログラムは、子どもたちの両親やコミュニティにも広がると思います」と述べています。

「このブランドの成長自体が、ナラティブ的なアプローチを取ってきたと思います。企業だけで発信していたら、ここまでにはなっていなかったでしょう。企業の思いを伝えるだけではなく、周囲のお客様とともにつくり上げていくことが重要であると理解しています」(株式会社ロッテ マーケティング本部 ブランド戦略部 部長 古市丈二氏)

「『私たちはこう思う』だけではない、その先にある『皆さんがどう思っているのか』。このキャッチボールをしてきたんですね、ロッテという企業は」(別所哲也氏)

「私たち消費者も企業がなにをしているのかは、調べたら分かるじゃないですか。そこまで含めてなにを買うべきか考えることは、自分のためにもなるし周囲のためにもなる」(IMALU氏)

「ナラティブとは物語ですが、その舞台は社会全体です。自分たちだけよければいいという考えではなく、皆といっしょに紡いでいく。大事なのは共創です」(本田哲也)

以上、前後編にわたって、放送された、国内外8社の企業が取り組むナラティブの事例を見てきました。いずれの企業も物語の力を上手くビジネスに活用することで、地域社会とのつながりや新規事業の創出、社内コミュニケーションの促進を実現しています。ナラティブ、共創の物語はこれからのビジネスシーンでますます欠かせない概念となっていくでしょう。
▼前編はこちらから

「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」

企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。

「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。

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