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パリオリンピック開幕。世界が熱狂するオリンピックに見る、「人々を惹きつけ、共感を生む」ナラティブ

パリオリンピック開幕。世界が熱狂するオリンピックに見る、「人々を惹きつけ、共感を生む」ナラティブ

1896年に開催された第1回アテネオリンピック。そこから128年後の2024年、7月26日から8月11日までの日程で、第33回となるパリオリンピックが開催されます。欧米諸国を中心にさまざまな都市で開催されてきたオリンピックは、大会規模の拡大とともに注目度と経済効果は高まり、多くの国家と企業にとって、今や無視できない一大イベントとなっています。

そんな世界の注目が集まる祭典の場には、過去多くのナラティブが生まれてきました。なぜオリンピックは人々を惹きつけ、広く後年まで語り継がれるイベントになったのか。オリンピックが生み出してきた数々のナラティブを紹介します。

「復興と成長の物語」だった1964東京五輪

紀元前9世紀ごろに始まったと考えられている古代オリンピックをベースに、世界平和を目的としたスポーツの祭典として1896年に生まれたのが近代オリンピックです。それから100年以上の年月を経てオリンピックは、人種も宗教も異なる200以上の国と地域が参加する、人類最大規模の祭典となりました。参加するアスリートはもちろん、国と地域、スポンサー企業やメディアなど多くのステークホルダーが参画しており、アスリートを応援する人々を巻き込んだナラティブを生み出す構図がオリンピックにはあります。

例えば今から60年前に開催された「1964年東京オリンピック」は、日本の戦後復興と高度成長のシンボルとして、人々の記憶に深く刻み込まれています。実は1940年には東京での開催が予定されていましたが、1937年に日中戦争が開戦し、第2次世界大戦に向けた戦争の気運が高まったことであえなく中止となりました。そこから24年を経て無事開催された東京オリンピックには、93の国と地域から男女5,152人の選手が出場。企業やメディアを含めたすべてのステークホルダーにとって、東京オリンピックに関わることは「復興と成長のナラティブ」に参画することでした。

脱・成長の時代に「持続可能な大会」を掲げるパリ五輪

2024年7月26日から8月11日の期間に開催される「2024年パリオリンピック」。1924年以来、計3回目となるパリでのオリンピックは、もっともサステイナブルな大会であると言われています。中国やインドなどの新興国が台頭し、従来のような経済成長が期待できない時代において、サステイナブルを大きなテーマに据え新しい時代のオリンピックの形を呈示しています。

これまで商業化にかじを切りすぎるあまり開催費用が肥大化し、自然破壊や会場の廃墟化、食品ロス、ゴミの廃棄などの問題を引き起こしてきたオリンピック。パリオリンピックでは95%の競技施設が既存施設の再利用、もしくは仮の施設であり、持続可能な大会にするための施策が随所に見られます。

2023年の5月にはパリの市長が「プラスチックを使用しない初のイベントにする」ことを宣言。主要スポンサーであるコカ・コーラ社も、ペットボトル飲料の代わりに再利用可能なボトルを提供し、飲料を供給するマシンを200台以上設置することを発表しています。

会場周辺で販売されるフードも環境に配慮されたメニューとなっています。牛肉の使用は禁止され、代わりに肉の味に近づけた野菜を使用。容器にもプラスチックは不使用で、すべてリサイクル可能な素材を用いています。これまでのような大量生産・大量消費型のオリンピックではなく、次世代に引き継がれる持続可能なオリンピックとして、そのスタイルも時代に合わせて変化を遂げています。

2021東京五輪から生まれた、未来に引き継がれるナラティブ

では、2021年に開催された第2回目となる東京オリンピックには、どのようなナラティブがあったのでしょうか? 本来であれば2020年開催の予定が、新型コロナウイルスの影響で2021年かつ無観客という異例の条件での開催となった前回。「東日本大震災からの復興」というナラティブは形骸化して、反対運動が各地で巻き起こったのも記憶に新しいところですが、競技内では印象的なナラティブも生まれました。

(出典:公益財団法人日本バスケットボール協会)

パリオリンピックに繋がるナラティブとして挙げられるのが、男子バスケの再起でしょう。2021年の東京五輪では3連敗の予選敗退に終わったものの、その後のワールドカップではアジア最上位の成績を残し、見事パリ五輪への出場権を獲得します。「パリ五輪に出場できなかったら引退する」という渡邊雄太キャプテンの不退転の決意のもと、一丸となって挑んだワールドカップで見せた復活劇は、多くのファンの心を捉えました。

これは開催国枠で出場できた東京五輪とは異なり、モントリオール五輪以来の実に48年ぶりとなる自力出場でした。日本のバスケットボール界では長らく「JBL」と「bjリーグ」の2リーグが併存していましたが、2016年には両リーグの統合により「Bリーグ」が発足。パリ五輪自力出場の背景には、このようなバスケ界を盛り上げて強くするための施策があったことも見逃せません。

もう一つ、人々の心を掴んだ出来事が、闘病を乗り越え、奇跡の復活を果たした池江璃花子選手の出場でしょう。2016年、自身が高校生の時にリオオリンピックに出場し、さまざまな日本記録を塗り替えてきた池江璃花子選手は、2019年に白血病を発症します。しかし、約10ヶ月間の入院生活の後、2020年の3月に水泳の世界に戻ってきます。驚異的なスピードで回復を見せ、コロナ禍による延期もあり見事東京オリンピックに出場。メダル獲得には至りませんでしたが、すでにパリへの出場権を獲得しており、今夏の活躍が期待されています。

「リオ大会の記録を超えたい」「自分を超えられるのは自分しかいない」とパリオリンピックへの決意を語る池江選手。人々を惹きつけ、共感を生むナラティブは、リオ・東京を経て、パリへと続いています。

「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」

企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。

「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。

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