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誰もが、どこにいても『居場所』のある世界をつくる。 Airbnbが逆境で見せた、パーパスを起点としたナラティブの力強さ。

誰もが、どこにいても『居場所』のある世界をつくる。 Airbnbが逆境で見せた、パーパスを起点としたナラティブの力強さ。

2008年の創業以来、ユニコーンとして急成長を遂げ、2020年には10兆円を超える時価総額で上場した、シェアリングエコノミーの先駆者Airbnb(エアビーアンドビー)。新型コロナ感染症の世界的拡大以降、外出の自粛により事業に大きな影響を受け、従業員のリストラを余儀なくされますが、パーパスを起点とした一貫した経営方針で社外からの称賛を受けています。「居場所づくり」を大切にするAirbnbのナラティブは、このコロナ禍においてどんな展開を生み出したのか、さらにロシアによるウクライナ侵攻においてAirbnbおよびユーザーが生み出した流れとはどのようなものなのか。事例をもとに紐解きます。

コロナ禍でも「居場所作り」は止めない

2008年に創業され、世界各国の現地の人たちが、自宅などを宿泊施設として提供するバケーションレンタルのオンラインマーケットとして急成長を遂げたAirbnb。同社は「Creating a world where anyone can belonging, anywhere. (誰もが、どこでも『居場所』がある世界をつくる)」というパーパスを掲げています。元々、創業者2名がロードアイランド州の美術大学で出会い、とあるインダストリアルデザインの会議に参加した際に、近隣エリアでホテルを予約することができない参加者向けに短期的な宿と朝食とビジネスネットワーキングの機会を提供しようとしたことがサービスの起源であり、パーパスにも繋がっています。

コロナ禍では、世界各国で行動制限や入国制限など大きな逆境に立たされましたが、オンラインで人々の繋がりを作り出す方法として、ホストとゲストがオンラインで繋がり体験を提供する「Online Experiences」をリリースしました。行動が制限される中、自宅で過ごす人がユニークな時間を楽しむことができ、専門的な知識やスキルを持つ人がオンラインで提供することで収入を得られるよう、Zoomでホストとゲストをつなぎ、郷土料理を学べる教室や、瞑想・ヨガのレッスン、手品のレッスン、絵画教室など、たくさんのバーチャル体験を楽しめる仕組みです。

CEOの解雇発表レターが体現する「パーパス」のあり方

一方で、市場環境の変化が事業にもたらす影響は大きく、2020年には全従業員の4分の1に当たる1900人の解雇を行うことになりました。この意思決定に対し、同社CEOのブライアン・チェスキー氏は、従業員に向けて発したメッセージを同社HPで公開。プロセスや保証だけでなく、再就職支援として、希望者に向けてプロフィールや履歴書、過去の仕事事例を人材名簿サイトに掲載し、新しい雇用主との仲介を行ったり、専門企業を通じた就職斡旋サービスなどの提供を丁寧に説明しました。

出典:https://news.airbnb.com/a-message-from-co-founder-and-ceo-brian-chesky/

同レターの最後には、「私たちにとって居場所がすべてであり、その中心には愛があるのです」という言葉が記されています。まさに有事でもパーパスに則った行動を体現しており、社外からは称賛の声も聞かれます。

ゲスト登録者自らが生み出す、ウクライナ支援のムーブメント

居場所づくりへの取り組みは、現在世界中の関心ごとであるロシアによるウクライナ侵攻に際しても行われています。同社と同社が運営する非営利団体Airbnb.orgは、2022年2月28日ロシアの侵攻を受けて国外に逃れようとしているウクライナの難民10万人に無料短期宿泊を提供する計画を発表しました。ブライアン・チェスキーCEOは「この目標を達成するためには、ホストの皆さんの協力が必要です。ポーランド、ドイツ、ハンガリー、ルーマニアなど、ウクライナに近い国々のホストに特に協力を求めます」とツイートしています。実際に、過去5年間で、シリア、ベネズエラ、アフガニスタンなどからの5万4000人以上の難民と亡命者に仮設住宅を提供した実績を持ちます。

ウクライナ支援に向けた動きはこれに止まりません。多くのゲスト登録者が、ウクライナで支援を必要としている住民に素早く送金する手段として、実際には訪れる予定のないウクライナでの宿泊先を予約しているのです。

図:「ウクライナ現地に行く予定はなく、現地の誰かを助けるための予約です」という趣旨の予約者のメッセージ

この動きに対し、Airbnbはウクライナのゲストとホストにかかる手数料を一時的にすべて免除し、「このような危機のさなか、私たちのコミュニティーが示した寛大さは気持ちを奮い立たせるもので、当社としても頭が下がる思いだ」と発表しています。パーパスに基づき、ステークホルダーが物語に自発的に参加し、それに企業も対応する。まさにナラティブを体現する共創の事例となっています

「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」

企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。

「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。

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