
視力矯正器具から自由に気軽に楽しめるファッションアイテムへ。Zoffと生活者が紡ぐメガネの新しい物語
それまで数万円が当たり前だったメガネの世界において、5,000円・7,000円・9,000円というリーズナブルな3プライスブランドの先駆けとして業界に革命を起こしたZoff。
メガネをTシャツのように毎日着替える社会を目指し、特殊プラスチック素材使用したかけ心地の良さを追求した「Zoff SMART(ゾフ スマート)」や、オールラバー素材でデザイン性と機能性を併せ持つ「Galileo(ガリレオ)」などの革新的なメガネを世に送り出してきました。
メガネの購買および利用習慣を変えることで、Zoffは生活者とどのような物語を紡ごうとしているのか。メガネブランド「Zoff」を運営する株式会社インターメスティック 代表取締役社長 上野博史氏が本田哲也と意見を交わします。
適正価格化には成功したが、未だ変わらないメガネの購買習慣
本田:創業から20年以上の月日が経過しましたが、当時と比べてメガネに対する社会の印象やマーケットはどのように変化したと感じますか。

上野:Zoffは2001年2月に開店した下北沢店からスタートしました。創業者である現会長はアパレル出身で、当時からメガネはファッションに比べてまだまだ価格も高く、気軽にかけ替える習慣もありませんでした。ファッションのような在庫管理やシーズンごとのトレンドの変化も少ないので、海外で安く製造すればビジネスとして上手く行くのではないか。そう考えてスタートした事業です。
創業時から「もっと自由に、楽しく、気軽に、メガネをTシャツのように毎日着替える社会をつくること」というコンセプトを掲げていますが、実は当時からメガネの購買動機は大きく変わっていません。多くの方がメガネを買い換えるのは「紛失したとき」「壊したとき」「度数が合わなくなったとき」です。我々はそれまで数万円が当たり前だったメガネ業界で、5,000円・7,000円・9,000円という3プライス市場をつくり上げました。これで皆さんの購買習慣が変わると思っていましたが、蓋を開けてみると大きく変わることはなかった。現状、我々のような低価格市場は伸びていますが、消費者のマインドを根本から変えて業界全体を成長させるには、自分たちのブランド自体が変わらない限り難しいと考えています。
本田:そこにはどのような理由があるのでしょうか? パーセプション(認識)の問題なのか、もっと深層心理的な問題なのか。
上野:今、スニーカーというファッションアイテムは誰もが当たり前に持っていますよね。スーツにスニーカーを合わせるのも普通になってきています。それはスニーカーが、誰もが自由に、楽しく、気軽に買えるアイテムだからです。機能もデザインも向上し、購買習慣もECで気軽に買える時代になっています。けれども、メガネはまだまだそのようになっていない。そこに理由があると思います。
本田:今ではカラフルなデザインのメガネも増えたし、皆さん気軽にかけ替えているイメージがありますが、現状はそうなっていないんですね。
上野:アパレルのEC比率も30%を超えるようになり、洋服が自由に買える時代になったにも関わらず、メガネはそうなっていません。製品自体の機能性や利便性、販売方法についてもまだまだ課題があると考えています。
創業時から「もっと自由に、楽しく、気軽に、メガネをTシャツのように毎日着替える社会をつくること」というコンセプトを掲げていますが、実は当時からメガネの購買動機は大きく変わっていません。多くの方がメガネを買い換えるのは「紛失したとき」「壊したとき」「度数が合わなくなったとき」です。我々はそれまで数万円が当たり前だったメガネ業界で、5,000円・7,000円・9,000円という3プライス市場をつくり上げました。これで皆さんの購買習慣が変わると思っていましたが、蓋を開けてみると大きく変わることはなかった。現状、我々のような低価格市場は伸びていますが、消費者のマインドを根本から変えて業界全体を成長させるには、自分たちのブランド自体が変わらない限り難しいと考えています。
本田:そこにはどのような理由があるのでしょうか? パーセプション(認識)の問題なのか、もっと深層心理的な問題なのか。
上野:今、スニーカーというファッションアイテムは誰もが当たり前に持っていますよね。スーツにスニーカーを合わせるのも普通になってきています。それはスニーカーが、誰もが自由に、楽しく、気軽に買えるアイテムだからです。機能もデザインも向上し、購買習慣もECで気軽に買える時代になっています。けれども、メガネはまだまだそのようになっていない。そこに理由があると思います。
本田:今ではカラフルなデザインのメガネも増えたし、皆さん気軽にかけ替えているイメージがありますが、現状はそうなっていないんですね。
上野:アパレルのEC比率も30%を超えるようになり、洋服が自由に買える時代になったにも関わらず、メガネはそうなっていません。製品自体の機能性や利便性、販売方法についてもまだまだ課題があると考えています。
アイケア後進国の日本で、サングラスの重要性を訴求する
本田:メガネは未だ自由に楽しく気軽に買える状態になっていない。裏を返せば、それだけ成長余地があるということですよね。では、もう一つの主力商品であるサングラスの戦略について教えていただけますか。

上野:Zoffの店舗の多くは全国のショッピングモールに出店していますが、各店舗の売上はショッピングモール全体の1%ほどです。社会環境も大きく変化する中、多くの消費者はネットで商品の情報を事前に調べて買い物をします。私たちはそんな情報のプロ化している消費者と向き合って、サングラスの役割をしっかりお伝えするべきだと考えています。日本は目の紫外線対策については途上国 です。オーストラリアでは子どものうちからサングラスの着用を奨励しており、学校で義務化している例もあります。紫外線のダメージは蓄積されるので、対策は子どものうちから行うのが効果的です。
本田:日本のドラッグストアには日焼け止めなどのUV対策商品が溢れていますが、サングラスに対する意識はまだまだ海外に追いついていませんね。一方で、最近は屋外スポーツにおいてサングラスの着用が増えるなど、変化の兆しも見られます。相手の目の動きが見えないと不安になる日本人に対して、欧米人は口の動きが見えないと不安になるといわれていますが、こういった文化的な要因も関係ありそうですね。人々の認識変容を起こすことが必要になりそうですね。
上野:そこは我々だけでなく、他社さんも含めて推進するべきだと思います。市場自体がどんどん縮小しているので、アイケア途上国 である日本を先進国にする必要があります。どこも本当に力を入れてサングラスの機能を啓発しているので、いずれは肌の紫外線対策と同じように、サングラスの着用も広く普及すると考えています。
本田:今は子どもも当たり前に日焼け止めを塗っているので、サングラスの潜在ニーズもそれだけ見込めるということですよね。人生100年時代、世界でも高齢化の進む日本においてアイケアはオーラルケアと並びとても重要になると思います。
本田:日本のドラッグストアには日焼け止めなどのUV対策商品が溢れていますが、サングラスに対する意識はまだまだ海外に追いついていませんね。一方で、最近は屋外スポーツにおいてサングラスの着用が増えるなど、変化の兆しも見られます。相手の目の動きが見えないと不安になる日本人に対して、欧米人は口の動きが見えないと不安になるといわれていますが、こういった文化的な要因も関係ありそうですね。人々の認識変容を起こすことが必要になりそうですね。
上野:そこは我々だけでなく、他社さんも含めて推進するべきだと思います。市場自体がどんどん縮小しているので、アイケア途上国 である日本を先進国にする必要があります。どこも本当に力を入れてサングラスの機能を啓発しているので、いずれは肌の紫外線対策と同じように、サングラスの着用も広く普及すると考えています。
本田:今は子どもも当たり前に日焼け止めを塗っているので、サングラスの潜在ニーズもそれだけ見込めるということですよね。人生100年時代、世界でも高齢化の進む日本においてアイケアはオーラルケアと並びとても重要になると思います。
髪形や洋服と同じ感覚で、メガネをかけ替えるメリット
本田:Zoffに来店する人たちは明確なニーズありきで来ているのか、それともなんとなく立ち寄っているのか、どちらの割合が多いですか?
上野:基本的にはニーズでのご来店ですので、ウォンツをいかに創出するかがポイントです。そこが伸びれば市場も大きくなるでしょう。メガネの概念を変えていかなければ、市場も成長しません。今、我々が力を入れているのがアニメやゲーム、キャラクターなどとのコラボレーションです。推し活の需要は大きく、メガネもコレクタブル(収集する価値のある)アイテムになれば間口が大きく広がります。メガネをより身近な存在に捉えていただき、そこをきっかけに新たな購買につなげることが目的です。
本田:「メガネをTシャツのように毎日着替える社会」が実現したとして、消費者にはどんなベネフィットがあるのでしょうか?
上野:私も50歳を過ぎていますが、年齢を重ねると顔の肉が落ちて、目も小さくなり、昔とはいろいろ変わってくるわけです。でも、そこで縁の太いメガネをかけるだけで、メイクや整形に頼らなくても一瞬で顔の表情を変えられる。普段の生活にメガネのアイテム数を増やすだけで、見え方も変わります。
本田:メイクやスキンケアと同じレベルで、メガネをかけ替えることが当たり前になってくる。消費者の認識が変わると、ニーズがなくても週末にふらりとZoffに立ち寄る人が増えるかもしれませんね。
上野:メガネは顔の中心にあるのに、毎日かけ替える人は少ないですよね。髪形や洋服を変えるのと同じ感覚で、メガネをかけ替えることは合理的な行動なんです。
上野:基本的にはニーズでのご来店ですので、ウォンツをいかに創出するかがポイントです。そこが伸びれば市場も大きくなるでしょう。メガネの概念を変えていかなければ、市場も成長しません。今、我々が力を入れているのがアニメやゲーム、キャラクターなどとのコラボレーションです。推し活の需要は大きく、メガネもコレクタブル(収集する価値のある)アイテムになれば間口が大きく広がります。メガネをより身近な存在に捉えていただき、そこをきっかけに新たな購買につなげることが目的です。
本田:「メガネをTシャツのように毎日着替える社会」が実現したとして、消費者にはどんなベネフィットがあるのでしょうか?
上野:私も50歳を過ぎていますが、年齢を重ねると顔の肉が落ちて、目も小さくなり、昔とはいろいろ変わってくるわけです。でも、そこで縁の太いメガネをかけるだけで、メイクや整形に頼らなくても一瞬で顔の表情を変えられる。普段の生活にメガネのアイテム数を増やすだけで、見え方も変わります。
本田:メイクやスキンケアと同じレベルで、メガネをかけ替えることが当たり前になってくる。消費者の認識が変わると、ニーズがなくても週末にふらりとZoffに立ち寄る人が増えるかもしれませんね。
上野:メガネは顔の中心にあるのに、毎日かけ替える人は少ないですよね。髪形や洋服を変えるのと同じ感覚で、メガネをかけ替えることは合理的な行動なんです。
革新的な製品投入で、技術革新の遅いメガネ業界を刷新する
本田:2020年に発表した「Eye performance」というブランド戦略に込めた意図を教えてください。
上野:自由に楽しく、気軽にメガネを購入できる習慣をつくらない限り、この市場は価格競争になってしまいます。新しい商品、新しいサービス、新しい機能を生み出して業界を変えていく。そのための指針として「Eye performance」を掲げています。2024年10月にリリースしたオールラバー素材の新シリーズ「Galileo(ガリレオ)」は、スニーカーのように気軽にかけられて壊れることもないメガネで、多くのお客さまから好評をいただいています。
以前、子どもの頃からメガネを着用している方から、「昔から自分の行動がいろいろ抑制されて、激しいスポーツなんてずっと禁止されていました」というお話しを伺ったことがあります。子どもは皆わんぱくだから、何をしても壊れないメガネがあってしかるべきなのに世の中には存在していなかった。そこで我々がつくろうと思い立ったのがGalileo誕生のきっかけです。
上野:自由に楽しく、気軽にメガネを購入できる習慣をつくらない限り、この市場は価格競争になってしまいます。新しい商品、新しいサービス、新しい機能を生み出して業界を変えていく。そのための指針として「Eye performance」を掲げています。2024年10月にリリースしたオールラバー素材の新シリーズ「Galileo(ガリレオ)」は、スニーカーのように気軽にかけられて壊れることもないメガネで、多くのお客さまから好評をいただいています。
以前、子どもの頃からメガネを着用している方から、「昔から自分の行動がいろいろ抑制されて、激しいスポーツなんてずっと禁止されていました」というお話しを伺ったことがあります。子どもは皆わんぱくだから、何をしても壊れないメガネがあってしかるべきなのに世の中には存在していなかった。そこで我々がつくろうと思い立ったのがGalileo誕生のきっかけです。

本田:御社は海外展開もされていますが、日本とはメガネやサングラスへの意識が異なると思います。国内、海外ともに今後の展望について教えてください。
上野:まずは日本にフォーカスして、国内でZoffブランドのステータスを上げていくことが大事だと考えています。私たちの独自の商品、独自のサービスは世界中を見渡しても珍しく、同じようなことを考える競合他社も多くは存在しません。技術革新の遅いメガネ業界を刷新するというコンセプトでZoffは生まれました。これからも社会の変化の先を読みながら事業モデルをアップデートして、革新的な製品を生み出していきます。
本田:ジャパンブランドとしてのZoffの思想には、世界を席巻できるポテンシャルがあると思います。老眼鏡が必要になってくる世代が、どうやって前向きに自分の身体と付き合っていくのか。オーラルケアと並び、これからの時代にはアイケアも必要になってくるでしょう。Zoffがその意識を変えてくれると信じています。
上野:まずは日本にフォーカスして、国内でZoffブランドのステータスを上げていくことが大事だと考えています。私たちの独自の商品、独自のサービスは世界中を見渡しても珍しく、同じようなことを考える競合他社も多くは存在しません。技術革新の遅いメガネ業界を刷新するというコンセプトでZoffは生まれました。これからも社会の変化の先を読みながら事業モデルをアップデートして、革新的な製品を生み出していきます。
本田:ジャパンブランドとしてのZoffの思想には、世界を席巻できるポテンシャルがあると思います。老眼鏡が必要になってくる世代が、どうやって前向きに自分の身体と付き合っていくのか。オーラルケアと並び、これからの時代にはアイケアも必要になってくるでしょう。Zoffがその意識を変えてくれると信じています。

アートを民主化したアンディ・ウォーホルのように眼鏡の民主化を目指すという意思の下、オフィスにはアンディ・ウォーホルの画が並ぶ
「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」
企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。
「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。