アウトドアギアを通じて、貧困問題と向き合う。「ネクスト・パタゴニア」と評されるCotopaxiのナラティブを探る
「ネクスト・パタゴニア」として注目を集めるアメリカ生まれのアウトドアブランド「Cotopaxi(コトパクシ)」。ミレニアル世代から絶大な支持を受け、2021年の4月には日本進出を果たすなど、既存のブランドをしのぐ勢いで躍進を続けています。彼らの急成長は決して偶然ではなく、その背後には愚直なまでのナラティブの実践を見て取ることができます。具体的な取り組みを挙げながら、そのナラティブのルーツを探っていきましょう。
貧困に苦しむ人々を救う。そのナラティブにユーザーを巻き込んでいく
2013年に、アメリカのソルトレイクで生まれたCotopaxiが掲げる企業理念は「Gear for good」。ハイクオリティなアウトドアギアの提供を通じて、「貧困に苦しむ人々を救う」ことを真剣に目指しています。この目標は単なる「お題目」に留まらず、彼らは実際にB Corporationの認証企業として、収益の1%を貧困問題解消のための取り組みに支出。さらに助成金プログラムを通じて、人々の生活向上を目指す支援団体への寄付を実施しています。
こうした活動の成果を、「インパクトレポート」として公開していることもポイントです。これを読めば、Cotopaxiの商品を購入したユーザーも、自分の消費行動が社会にポジティブなインパクトを与えているということを実感できるからです。「Gear for good」というナラティブにユーザーを巻き込むためには、非常に有効な手段だと言えるでしょう。
こうした活動の成果を、「インパクトレポート」として公開していることもポイントです。これを読めば、Cotopaxiの商品を購入したユーザーも、自分の消費行動が社会にポジティブなインパクトを与えているということを実感できるからです。「Gear for good」というナラティブにユーザーを巻き込むためには、非常に有効な手段だと言えるでしょう。
社会性の高いナラティブも、根っこにあるのは個人的な想い
では、彼らはなぜこうしたナラティブを紡いでいくことを選んだのか。そのパッションの根源を理解するには、創業者であるデイヴィス・スミス氏の生い立ちを知る必要があります。
アメリカで生まれたスミス氏は、4歳のときにドミニカ共和国へ移住。ラテンアメリカのなかでも最貧国であるドミニカで、彼は極度の貧困状態にある人々の姿を目の当たりにしながら育っていきます。一方で、ドミニカは、雄大な自然を抱える国でもあります。
アメリカで生まれたスミス氏は、4歳のときにドミニカ共和国へ移住。ラテンアメリカのなかでも最貧国であるドミニカで、彼は極度の貧困状態にある人々の姿を目の当たりにしながら育っていきます。一方で、ドミニカは、雄大な自然を抱える国でもあります。
アンデス山脈エクアドル側で活動する成層火山、コトパクシ山
特に、社名の由来にもなっているコトパクシ山を取り巻く環境に魅了されたスミス氏は、休日のたびにコトパクシ国立公園を訪れ、探索やキャンプを楽しんだそうです。こうした経験こそが「アウトドアギアを通じた貧困問題の解決」というアイデアのルーツになっていることは言うまでもありません。
人にも自然にもやさしい、サステナブルなものづくりを
自然へのリスペクトは、製品づくりにも表れています。素材には、他ブランドが製品をつくるなかで生じた残材を利用し、廃棄した布やジッパーを再利用し、環境負荷を軽減。ダウン製品には、RDS認定を取得したフェザーを使用するなど、アニマルフェアネスにも配慮しています。
Cotopaxiは人へのリスペクトも忘れません。労働環境の改善に取り組み、それぞれの製品を「誰が、どこで、どうやって作っているのか」を、Webサイト上でオープンに公開。フェアトレードにも積極的で、リュックなどを製造するフィリピンの工場では、工場使用料を通常よりも上乗せして支払い、その分が現地の職人の福利厚生に活用されているそうです。さらに驚くべきは、商品づくりを担う職人が誇りを持って幸せ働けるように、従来のアパレルブランドでは考えられないレベルの裁量を与えている点でしょう。縫製などを担う職人には、リュックなどの色使いをはじめ、生産数を決定する権限すら与えられていると言います。
ちなみにCotopaxiの製品は、61年間の「生涯保障」付き。61という数字は、発展途上国の平均寿命から算出されたものです。これはもちろん、長く使い続けられる製品の質の高さを謳ったものでもありますが、同時に私たち先進国の人間にとっては、「平均寿命の格差」という現在の世界のアンフェアな実情を突きつけるものでもあるでしょう。
Cotopaxiは人へのリスペクトも忘れません。労働環境の改善に取り組み、それぞれの製品を「誰が、どこで、どうやって作っているのか」を、Webサイト上でオープンに公開。フェアトレードにも積極的で、リュックなどを製造するフィリピンの工場では、工場使用料を通常よりも上乗せして支払い、その分が現地の職人の福利厚生に活用されているそうです。さらに驚くべきは、商品づくりを担う職人が誇りを持って幸せ働けるように、従来のアパレルブランドでは考えられないレベルの裁量を与えている点でしょう。縫製などを担う職人には、リュックなどの色使いをはじめ、生産数を決定する権限すら与えられていると言います。
ちなみにCotopaxiの製品は、61年間の「生涯保障」付き。61という数字は、発展途上国の平均寿命から算出されたものです。これはもちろん、長く使い続けられる製品の質の高さを謳ったものでもありますが、同時に私たち先進国の人間にとっては、「平均寿命の格差」という現在の世界のアンフェアな実情を突きつけるものでもあるでしょう。
モノとしての価値ではなく、ナラティブの価値が評価されるプロダクト
「Gear for good」を徹底するCotopaxiのブランドコンセプトやファッション性の高さだけでなく、体験型のアドベンチャーイベント「Questival(クエスティバル)」もミレニアル世代の心を掴んでいます。「Questival(クエスティバル)」はクエストとフェスティバルの掛け合わせから生まれた造語で、2人~6人のチームを組み、専用のアプリをインストールしたあと、24時間で数百のミッションをクリアしていく参加型のイベントのこと。一見、Cotopaxiとは関係ないように思えますが、チームで参加するユニークな体験を作ることで、ある種の「熱狂」と「共創」を生み出しています。
Cotopaxi: Questival 2017 Year In Review
Cotopaxi Questival Instagram
このように、ユーザーの多くはアウトドアギアという「モノ」だけではなく、そのプロダクトが体現する「ナラティブ」に価値を見出しているのです。創業者の個人的な想いを、社会的な価値のあるナラティブへと昇華し、それに多くのユーザーを巻き込んでいく。こうしたCotopaxiの実践は、まさにナラティブカンパニーのあるべき姿の一つです。そう考えると「ネクスト・パタゴニア」という表現も、まったく大げさなものではありません。きっと日本でも、多くのユーザーから支持される新時代のアウトドアギアブランドとして成長していくはずです。
Cotopaxi: Questival 2017 Year In Review
Cotopaxi Questival Instagram
このように、ユーザーの多くはアウトドアギアという「モノ」だけではなく、そのプロダクトが体現する「ナラティブ」に価値を見出しているのです。創業者の個人的な想いを、社会的な価値のあるナラティブへと昇華し、それに多くのユーザーを巻き込んでいく。こうしたCotopaxiの実践は、まさにナラティブカンパニーのあるべき姿の一つです。そう考えると「ネクスト・パタゴニア」という表現も、まったく大げさなものではありません。きっと日本でも、多くのユーザーから支持される新時代のアウトドアギアブランドとして成長していくはずです。
「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」
企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。
「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。