7分身ロボットで、すべての人の孤独を解消したい。オリィ研究所が紡ぐ、やさしく大きな物語。
オリィ研究所株式会社が手がける分身ロボット「OriHime」は、障害などによる外出困難者を支えるプロダクトであると同時に、私たち誰もが抱えうる「孤独」を解消するためのプロダクトです。世界中の全ての人をやさしく巻き込んでいくかのような、その壮大なナラティブの原点とは何なのか。どのように人々を共感の渦に巻き込んでいるのか。その秘密の一端に迫ります。
ロボットベンチャーではなく、「孤独解消」ベンチャー
分身ロボット「OriHime」を開発・提供するオリィ研究所。そう聞くと、いわゆる「ロボットベンチャー」を想像されるかもしれませんが、創業者である吉藤オリィさんは、自身のTwitterで「うちは創業時から孤独解消ベンチャーであってロボットベンチャーではない」と語っています。
吉藤さんが「孤独解消」を生涯の研究テーマと定めたのは、高校生だった17歳のとき。自らが小学校5年から中学2年までの間に学校に通えず「居場所のなさ」を感じていた経験から、さまざまな理由で外出困難に陥っている人たちの孤独感を、何とか解消したいと考えたことがきっかけだったと言います。
その後、早稲田大学へと進学した吉藤さんが大学3年生のときに発表したのが、外出が困難な人でもロボットを遠隔操作することで人との出会いを可能にする「分身」というコンセプトです。2010年に独力で分身ロボットOriHimeの初号機の開発に成功に成功すると、2012年には「オリィ研究所」として株式会社を設立。現在OriHimeシリーズは、子育てや単身赴任、入院など距離や身体的問題によって「行きたいところに行けない人」の「もう一つの身体」として活用されているほか、コロナ禍以降はテレワークツールや受付・接客ツールとして、ビジネス領域でも導入が進んでいます。
その後、早稲田大学へと進学した吉藤さんが大学3年生のときに発表したのが、外出が困難な人でもロボットを遠隔操作することで人との出会いを可能にする「分身」というコンセプトです。2010年に独力で分身ロボットOriHimeの初号機の開発に成功に成功すると、2012年には「オリィ研究所」として株式会社を設立。現在OriHimeシリーズは、子育てや単身赴任、入院など距離や身体的問題によって「行きたいところに行けない人」の「もう一つの身体」として活用されているほか、コロナ禍以降はテレワークツールや受付・接客ツールとして、ビジネス領域でも導入が進んでいます。
クラウドファンディングで4千万円以上を集めた「分身ロボットカフェ」
「分身ロボットカフェDAWN ver.β」(出典:DAWN ver.β公式サイト)
そんなオリィ研究所がクラウドファンディングで集めた4千万円以上の支援金をもとに、2021年6月にオープンさせたのが、OriHimeが接客を担う「分身ロボットカフェDAWN ver.β」です。OriHimeを操作するのは、ALSなどの難病や重度障害で外出が困難な人々。店内では、移動機能を備えた「OriHime-D」が料理を運んだり、物販スペースと飲食テーブル各席に配置されたOriHimeが注文を取ったり商品の説明をしたりといったサービスを提供。接客時には利用者とパイロットとが、リアルタイムの会話を楽しむこともできます。
「動きたくても動けない」意欲ある外出困難者のために、雇用の場を創出するというだけでも意義深い取り組みですが、さらにこのプロジェクトがナラティブとして優れているのは「あらゆる人の社会参加を目指す、公開実験」と位置づけられている点でしょう。それを端的に表したのが「寝たきりの、先へ行く」というキャッチコピーです。分身ロボットカフェのWebサイトに記載されたイントロダクションを読むと、その意図はさらに明確になります。
「動きたくても動けない」意欲ある外出困難者のために、雇用の場を創出するというだけでも意義深い取り組みですが、さらにこのプロジェクトがナラティブとして優れているのは「あらゆる人の社会参加を目指す、公開実験」と位置づけられている点でしょう。それを端的に表したのが「寝たきりの、先へ行く」というキャッチコピーです。分身ロボットカフェのWebサイトに記載されたイントロダクションを読むと、その意図はさらに明確になります。
決して煽情的ではなく、丁寧な語り口であるにも関わらず、このメッセージはどこか私たちをハッとさせるところがあります。それは私たちがいつかは必ず自由に動けなくなるという、普段は意識しないようにしている事実を、静かに提示するものだからではないでしょうか。
誰もが当事者であると思えるような物語を紡いでいく
さらにイントロダクションは次のように続きます。
ここでは「世界中の人類」が、既に「移動困難」による孤独の当事者であることが語られます。こうしたイントロダクションを踏まえると、OriHimeに対する印象がさらに変化してくるのではないでしょうか。つまり、OriHimeは外出困難を抱えている一部の人たちを支えるプロダクトなのではなく、社会的なつながりを必要とする、私たち全員のために開発されたものなのだ、と。分身ロボットカフェプロジェクトは、OriHimeに対する人々のパーセプションを変化させ、より多くの人を「孤独解消」という物語へと巻き込む、ナラティブ的にも非常に効果的な取り組みだと言えるでしょう。
実際にSNS上では、障害者支援や孤独の解消、コロナ禍におけるコミュニケーションの拡張など、自身が共感を得たそれぞれの文脈と共に、分身ロボットカフェでの体験を綴る利用者の感想が溢れています。「#分身ロボットカフェ」で検索すると、そのナラティブの広がりが伝わってくるはずです。「不登校」という個人的な経験からスタートした取り組みが、世界のすべての人が「これは私のためのものだ」と共感できる物語となっていく。オリィ研究所の在り方は、ナラティブカンパニーの一つの理想型を示しています。
実際にSNS上では、障害者支援や孤独の解消、コロナ禍におけるコミュニケーションの拡張など、自身が共感を得たそれぞれの文脈と共に、分身ロボットカフェでの体験を綴る利用者の感想が溢れています。「#分身ロボットカフェ」で検索すると、そのナラティブの広がりが伝わってくるはずです。「不登校」という個人的な経験からスタートした取り組みが、世界のすべての人が「これは私のためのものだ」と共感できる物語となっていく。オリィ研究所の在り方は、ナラティブカンパニーの一つの理想型を示しています。
「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」
企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。
「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。