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AKB、K-POP、FRUITS ZIPPER──アイドルのナラティブ進化論

AKB、K-POP、FRUITS ZIPPER──アイドルのナラティブ進化論

2026年2月1日、アイドルグループFRUITS ZIPPERが、デビューから4年弱で東京ドームでの単独公演『FRUITS ZIPPER SPECIAL LIVE 2026「ENERGY」』を開催しました。「原宿から世界へ」をコンセプトに活動を開始した彼女たちは、TikTokでZ世代を中心に人気を博し、2ndシングル『わたしの一番かわいいところ』はTikTok内で約28億回という再生回数を記録。日本レコード大賞でも3年連続で評価を受け、昨年末は「第76回NHK紅白歌合戦」にも初出場を果たします。今や「国民的アイドル」とも呼ばれる存在となった彼女たちですが、その成功のプロセスは、従来のアイドルとは大きく異なるものでした。
AKB48、K-POP、FRUITS ZIPPER──それぞれのアイドルが、ファンとともに紡いできたナラティブを読み解いていきます。

ファンを「物語の共著者」に変えた、AKB革命

日本のアイドル文化において、アイドルとファンとの関係性を大きく変えた存在がAKB48です。AKB48以前のアイドルとファンの関係は基本的に「ストーリーを届けるアイドル」と「ストーリーを消費するファン」という固定化された一方通行でした。AKB48の登場により、この構造は大きく姿を変えます。
「会いに行けるアイドル」というコンセプトの本質は単なる距離の近さだけではありません。ファンを「物語の共著者」にする仕組みにあります。握手会でメンバーと直接交流できる体験を提供し、2009年に始まった選抜総選挙では、ファンがCDを購入し投票することで推しの命運(=物語の展開)を直接左右できるようになりました。これは、それまで物語の観客であったファンたちを「物語の共著者」に変えた画期的なメカニズムです。
熱狂的な支持を集めた選抜総選挙は2018年まで開催され、全国各地に48グループが誕生する契機となり、ももいろクローバーZや乃木坂46などのアイドルグループとともに2010年代の「第一次アイドル戦国時代」というムーブメントを生み出すことになります。

「解読者」としてファンを招待する、カウンターとしてのK-POP

AKB48とは対照的なモデルを提示したのがK-POPです。ファンを物語の共著者に変えた「共著型ナラティブ」に対し、BTSやTWICEに代表される第3世代K-POPは、ファンを「解読者」として招待するスタイルを確立したと言えるでしょう。秋元康氏が手がける48グループや坂道グループに見られる、成長過程そのものを物語として提示するアイドルとは異なり、K-POPは圧倒的なクオリティと精緻に設計されたコンセプトでファンを魅了します。楽曲、衣装、パフォーマンス、ミュージックビデオ、さらにはメンバー同士の関係性までもが一体となって一つの物語を構築し、ファンがそれを解読する。受け身ではなく、能動的に物語を解読するスタイルは、完成された世界観を読み解く形で参加するナラティブと言えるでしょう。ここにAKB48とは異なる新しい熱量の生み出し方が見られます。

「発見者」が物語を届ける、SNS時代のナラティブ

「第一次アイドル戦国時代」から十数年が経ち、アイドルの主戦場がSNSへと移りつつある現在。そこには、「物語の共著者」や「物語の解読者」とも違う「発見者」というナラティブがあります。共著者がアイドルの物語の「展開」を動かしたとすれば、発見者はその物語の「広がり」を動かします。FRUITS ZIPPERの『わたしの一番かわいいところ』は、テレビ出演や大規模なプロモーションよりも先にTikTok上で拡散されました。その拡散の中心にいたのは、音楽メディアやプロデューサーではなく、一般のファンたちでした。「自分がこのグループを最初に見つけた」という発見の物語を共有したファンが自主的にSNSで拡散して、大きなムーブメントを生み出しました。
FRUITS ZIPPERのプロデューサーである木村ミサ氏は『わたしの一番かわいいところ』の制作にあたって「“思わず踊りたくなる楽曲”と“アイドルファンがTikTok動画で使える楽曲”を意識した」とインタビューで語っています。ネガティブな要素がない「アイドル全肯定」の歌詞や、上半身だけでも踊れるダンスなど、楽曲も歌詞も振り付けもSNSでの拡散を意識した設計になっている点が大きな特徴です。FRUITS ZIPPERのブレイクにおいて、ファンは観客でも解説者でもなく、グループの成功を社会に届けた「自発的な伝道師」のような役割を担っているのです。2026年の東京ドーム公演は、そうした「発見者」たちの成果として誇れる到達点だったと言えるでしょう。
FRUITS ZIPPERだけにとどまらず、同じアソビシステムのアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」に所属する姉妹グループのCANDY TUNEやCUTIE STREET、スターダストプロモーションの超ときめき♡宣伝部など、多くのグループが同様のルートで台頭しています。SNSがアイドルの主戦場となった今、「メジャーアイドル」と「地下アイドル」という従来の境界線も曖昧になりつつあります。
アイドルの歴史は、ファンとの関係性の歴史でもあります。ファンが物語の展開に共著者として参加したAKB48、解読者として物語の意味を読み解くK-POP、そして発見者として物語の到達範囲を広げるSNS時代のアイドル。
アイドルを取り巻くナラティブは今、一つの形に収束することなく、さまざまな形で生まれ続けているのです。

「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」

企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。

「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。

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