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パタゴニアやAmazon、Netflixが導入するナラティブの形 「未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ」<前編>

パタゴニアやAmazon、Netflixが導入するナラティブの形 「未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ」<前編>

ナラティブをテーマにした経済番組「未来スクリプト 世界を変える「物語」のチカラ」が、2022年10月16日にテレビ東京で放映されました。番組では世界最先端企業である、アマゾン、ネットフリックス、パタゴニアのほか、コクヨ、KDDI、ロッテなどの日本企業がこぞって取り入れるナラティブな活動の潮流を捉え、企業活動成功の秘密に迫っています。MCには別所哲也氏、コメンテーターには潮田玲子氏、IMALU氏、小浜桃奈氏とともに、本田哲也も登場しました。放送で語られたトークを引用し、取り上げられた内容をお伝えします。

株主は地球。顧客とともに紡ぐパタゴニアのナラティブ

アウトドアブランドのパタゴニアはナラティブを語る上で欠かせない企業といえるでしょう。今年2022年の9月14日、創業者のイヴォン・シュイナードは同社の全株式を手放すことを発表しました。

同社のWebサイトには「地球が私たち唯一の株主」という声明とともに、以下の文章が掲載されています。

“私たちは「株式公開に進む(Going public)」のではなく、「目的に進む(Going purpose)」のです。自然から価値あるものを収奪して投資家の富に変えるのではなく、パタゴニアが生み出す富をすべての富の源を守るために使用します”

「イボンがこのような考えを示したことで、自分たちは本当になにができるのかを再認識しました。地球が株主であるということを理解して、どう進めていくのか。それをあらためて考える機会になっています」(パタゴニア日本支社 中西悦子氏)

「このイヴォン・シュイナードの発言には『節税対策なのでは?』といった批判もあったそうですが、彼は『私たちは地球を守るためにビジネスをやっている』ということを一貫していい続けています。創業者の思いを従業員も顧客もいっしょに紡いでいるわけです」(本田哲也)

「パタゴニアの商品を買って地球環境に貢献できると思うと、企業の方針に惚れ込む人が多い理由が分かります」(小浜桃奈氏)

ブレることなく創業時の思いを持ち続け、トップだけでなく従業員も顧客もそれを理解している。まさに、お手本のようなナラティブがここにあります。

トップと社員の気軽なコミュニケーションが社内改革の原動力。パナソニック コネクトの事例

パナソニック コネクトは高い技術力を他社に提供し、課題解決の仲立ちをしている企業です。同社のオフィスには仕切りも柱もありません。デスクもフリーアドレスで、 個人の荷物はすべてロッカーに収納します。5年前に本社機能を大阪から東京に移転させたのを契機に、社内の意識改革を実行。提出することが目的になっていた週報や無駄な会議など、形骸化した取り組みを見直して従業員の働きやすい環境を実現した結果、残業も減りワークライフバランスが大幅に向上しました。

改革の端緒となったのが、現社長である樋口泰行氏の就任です。氏は就任当時の様子を以下のように語ります。
「とにかく組織間のコミュニケーションが悪く、隣と話さないのは当たり前だったので、そこを攪拌しないといけなかった。服装でも考え方でも思想でも、まわりと違ってはいけないという風潮で、発想が広がっていきませんでした」(パナソニック コネクト株式会社 代表取締役 樋口泰行氏)

樋口社長は普段からオフィス内を散歩して自ら社員に声をかけ、気軽にコミュニケーションが生まれる雰囲気を醸成しています。

「昔のスポーツの世界は気合いと根性がすべてでしたが、今はメンタルトレーニングや科学的なトレーニングが普及して環境が整ってきました。いい環境があるからこそパフォーマンスが伸びるという点では、スポーツもビジネスも同じだと思います」(潮田玲子氏)

「物語を始めるのはリーダーですが、上からの押しつけでは一緒の物語はつくれません。だから、カジュアルにフラットにやっていくことが大切。そして、リーダーの思いを言葉にすることも大事です。会社としてのパーパス(存在意義)を言葉として表すことが最近の大きな流れです」(本田哲也)

トップダウンに陥らず、ナラティブのエッセンスを取り入れて社員を巻き込む。これが、パナソニック コネクトの組織改革が成功した秘訣といえるでしょう。

パワポに頼らず、会議では6ページのメモを使用。徹底したAmazonの顧客第一主義

Amazonは会議やプレゼンの場におけるパワーポイントなどのソフトの使用を禁止しています。代わりに物語仕立ての6ページのメモをもとに会議を進めていくのです。さらに「曖昧な形容詞は使わないこと」「数値だけではなく、具体的な比較の対象を挙げること」「専門用語を避け、初見の人でも理解できるように書く」といった厳格なルールが定められています。Amazonは徹底して顧客第一主義を貫いている企業です。会議でも常に「本当に顧客の役に立つのか?」「本当に顧客に求められているのか?」といった視点で議論を進めます。

「パタゴニアと同様、どんな物語を顧客とつくっていくのかをAmazonは重視しています。一方通行なストーリーと違い、ナラティブは双方向です。Amazonは常に顧客と一緒にナラティブをつくることを重視しています」(本田哲也)

「本当に伝えたいメッセージに人間らしい体温を乗せる。それが大切なのかもしれませんね」(別所哲也氏)

細かい指示ではなく、文脈を共有して社員を動かすNetflix

“船を作りたいのなら、人を呼んで材木を集めさせたり、仕事を割り当て、命じる必要はありません。 代わりに果てしなく続く海への憧れを解いてやりなさい”

これはNetflixが社内向けWebサイトに引用している、星の王子さまの作者の言葉です。同社が大事にしているのは「コントロール」よりも「コンテクスト(文脈)」です。

「コントロールとは、ああしろ、こうしろという具体的な指示を出すことです。コンテクストとは、全体の中で自分の役割を伝えてチームで動くことです。大事なのは、上から目線ではないやり方です」(本田哲也)

「明確な指示があった方が能力を発揮できるタイプの人もいると思います。そのバランスが難しいと思いました」(潮田玲子氏)

10億人の障碍 者にゲームの楽しさを届けるMicrosoftの取り組み

Microsoftの「Xbox アダプティブ コントローラー」は、障碍のある人でもゲームを楽しめるよう開発された製品です。外付けのスイッチ、ボタン、ジョイスティックなどを接続してゲームを楽しむことができます。

これまでは障碍を抱えた人が、複雑な操作を必要とするゲームで遊ぶことは困難でした。しかし、 アダプティブ コントローラーは複数のスイッチやスティックを使うことで、身体に障碍のある人でも最大限にゲームを楽しむことを可能にしました。

Microsoftは世界で10億人を超える障碍のある人をサポートするため、格差を減らす取り組みを続けています。健常者と同じく障碍を抱える人たちもゲームで遊んだり、働いたり、教育を受けることを望んでいるのです。

「これこそ『誰も取り残さない』というメッセージの実現だと思います」(本田哲也)

「ご本人だけではなく、支えている家族やコミュニティなど、そのまわりで苦労してきた人たちも勇気づけられますね」(別所哲也氏)

後編では ロッテ、KDDI、コクヨの取り組みを紹介します。

「Narrative Genes ~ナラティブの遺伝子たち~」

企業と社会の関係性が見直される時代に注目が集まる「ナラティブ」を
PRストラテジスト・本田哲也を中心に、企業経営、ブランディングの先駆者と共に考えるウェブサイト。

「ナラティブ」とは、企業と消費者(生活者、ユーザー)との「共体験」の物語のこと。
企業経営において重要な「共創」に着目した、新たなアプローチ概念です。

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